個人年金保険にかかる税金の基本と最もトクする受取方法
個人年金保険の年金受取時の税金の基本と、できるだけ多くの年金を受け取るための考え方を紹介します。確定申告の必要性や途中解約時の税金、生命保険料控除もあわせて解説します。
個人年金保険の年金を受け取るときには税金がかかります。しかも、契約内容や年金の受け取り方によって、かかってくる税金の種類が違ってきます。それなら、できるだけ税金が安くなる受け取り方をしたいところですが、税金を安くすることだけを考えていると、結果的に受け取れる金額が少なくなる場合があります。
この記事では、個人年金保険の年金受取時の税金について基本的なことを解説したうえで、できるだけ多くの年金を受け取るための考え方を紹介します。あわせて確定申告の必要性や途中解約時の税金、生命保険料控除についても整理します。
個人年金保険をお得に受け取るための2つのポイント
個人年金保険の年金にかかる税金は、契約内容や年金の受け取り方によって変わってきます。場合によっては税金が多くかかることもありますし、税金のことばかり気にしていると結果的に受取額が減ってしまうこともあります。
できるだけ多くのお金を受け取るために押さえておきたいポイントは、以下の2つです。
- 保険料負担(支払)者と年金受取人は同一にする
- 年金開始時に一括受け取りをせず、毎年、年金を受け取る
「自分の個人年金保険は自分で保険料を支払って、規定どおり毎年、年金を受け取る」ことが、税金面での失敗を避けるための基本的な考え方です。その理由について、次章以降で詳しく解説していきます。
年金受取時にかかる税金の違い(前提となる知識)
個人年金保険の年金は、保険料を支払った人と年金を受け取る人の関係性により、所得税がかかるか贈与税がかかるかが変わってきます。また、年金を一括で受け取るか毎年受け取っていくかによって所得の種類が変わり、税金の計算方法も変わってきます。
保険料を支払った人と年金を受け取る人の関係性による違い
個人年金保険の年金は、保険料を支払った人が年金を受け取るときは所得税の対象となります。一方、保険料を支払った人と年金を受け取る人が別人のときは、年金の受取開始時にその時点の年金の評価額に贈与税がかかり、2年目以降の年金受取には初年度の評価額から運用で増えた部分に所得税がかかります。
| 契約内容 | かかる税金の種類 | 該当する例 |
|---|---|---|
| 保険料負担者=受取人 | 所得税 | 保険料負担者:本人、受取人:本人 |
| 保険料負担者≠受取人 | 年金受取開始時:贈与税、2年目以降の年金:所得税 | 保険料負担者:配偶者の一方、受取人:もう一方 |
通常は契約者が保険料を支払うため、契約者=受取人となる契約にすれば所得税としての課税になりますが、契約上契約者=受取人であっても実際には別の人が保険料を支払っていると、税制上は贈与税の対象となります。例えば、配偶者の一方が契約者かつ年金受取人となっている個人年金保険の保険料を、実際にはもう一方が支払っていると贈与税がかかることになるため注意が必要です。
個人年金保険の税金の分岐:保険料負担者と受取人が同一人物かどうかで所得税・贈与税に分かれる
一括で受け取るか年金で受け取るかによる違い(所得税のケースで)
保険料を支払った人が年金を受け取り、所得税の対象となる場合でも、一括で受け取るときは「一時所得」、年金として毎年受け取るときは「雑所得」という所得区分で課税されるという違いがあります。
| 受け取り方 | 所得種類 | 所得の計算方法 |
|---|---|---|
| 一括受取 | 一時所得(保証期間付終身年金の場合は雑所得) | 総収入金額-必要経費-50万円(特別控除)、この結果の1/2が課税所得 |
| 毎年受取 | 雑所得 | 総収入金額-必要経費 |
年金を一括で受け取るときは原則、一時所得となりますが、保証期間付終身年金の保証期間部分を一括で受け取るときは雑所得となります。これは、たとえ一括で受け取っても、保証期間終了後に生存していれば年金の受け取りが始まるため、全額一括の受け取りとはみなされないためです。
お得な受け取り方の考え方(モデルケースによる比較)
課税のされ方がわかったところで、それぞれの課税パターン別に税金のかかり方を比較してみましょう。仮に、契約者(=保険料負担者=年金受取人)が受け取る年金額が保険料支払総額を大きく上回らないような一般的な契約の場合を考えます。
一時所得の計算方法(保険料負担者=年金受取人|一括受け取り)
年金(保証期間付終身年金を除く)を一括で受け取ったときは、一時所得として所得税がかかります。一時所得の計算方法は「総収入金額-必要経費-50万円(特別控除)」です。個人年金保険の年金の場合は、受け取る年金額が総収入となり、支払った保険料が必要経費となります。
一般的な個人年金保険では、一括受取額と払込保険料総額の差が小さいケースが多く、そこから50万円の特別控除を差し引くと、一時所得の金額が0円(結果的に税金がかからない)になるケースも少なくありません。
雑所得の計算方法(保険料負担者=年金受取人|年金受け取り)
本来の年金の受け取り方どおり、毎年年金を受け取る場合は雑所得となります。雑所得の計算方法は「総収入金額-必要経費」です。この場合の必要経費は、支払った保険料の合計額と年金の受け取り総額の比率に応じて、以下の計算式で算出します。
年金(年額)×払込保険料合計額÷年金受取合計額
一括受け取りに比べて雑所得のほうがわずかに税金がかかりやすい傾向にありますが、他の所得と合算しても、個人年金保険の年金だけで大きな税額になるケースは多くありません。
贈与税の計算方法(保険料負担者≠年金受取人)
個人年金保険の保険料を負担した人と別の人が年金を受け取るときは、贈与税がかかります。その贈与税は、年金受け取り開始時の段階で今後受け取ることができる年金の権利(年金受給権)の評価額に対してかかります。年金受給権評価額は、(1)解約返戻金の額、(2)一括で受け取るときの金額、(3)予定利率等をもとに計算した金額のうち、もっとも大きい額です。
贈与税には基礎控除110万円があり、これを差し引いた額に税金がかかります(2026年9月時点の税制に基づく)。基礎控除後の課税価格に応じた贈与税率は、以下のとおりです。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | ー |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 3,000万円超 | 55% | 400万円 |
このように贈与税になると、受け取る年金にかかる税金が非常に大きくなってしまいます。さらに、この場合に年金を毎年受け取っていくと、受取総額から贈与税の対象となった評価額を差し引いた金額相当額に、雑所得がかかります。
保険料負担(支払)者と年金受取人を同一にすべき理由
上記のとおり、保険料負担者と年金受取人が別人で贈与税の対象になった場合は、通常の所得税の課税と比べて桁違いに高い税金がかかります。高額な税金がかからないようにするためには、保険料を支払う人と年金を受け取る人は同一人物にするようにしましょう。
もし、すでに保険料負担者と年金受取人が別の契約になっているという場合は、途中からでも契約内容を変更して契約者と年金受取人を同一人物にすることをおすすめします。ただし、契約を変更しても、変更前の保険料支払分の年金には贈与税がかかり、変更後の年金に所得税がかかるという扱いになります。
一括受け取りをせず、毎年、年金を受け取るべき理由
税金が少なくてすむという視点だけでみれば、個人年金保険は年金として受け取るよりも一括で受け取ったほうがよいということになる場合があります。しかし、一括で受け取る場合の一時金の額は、年金で受け取る場合の年金総額よりも小さくなるため、手元に入ってくるお金も少なくなる傾向があります。
年金は複数年にわたって少しずつ受け取っていくため、一括で受け取っても、そのお金を別途資産運用で増やすことができればその差は埋められます。しかし、資産運用にはリスクが伴い、運用で増やした利益には約20%の課税もあるため、よほど資産運用が上手な人でなければ、原則的には年金として受け取ったほうが多くのお金を受け取れる傾向にあります。個人年金保険の運用利率以上で運用できる人であれば、そもそもはじめから個人年金保険を選ばず、他の運用方法を選んだほうがよいでしょう。
年金受取時に確定申告が必要な人
年金受取時の税金について、もう一つ気になることは確定申告の必要性ではないでしょうか。確定申告が必要かどうかは、個人年金保険の年金額だけでは判断できず、その他の所得があるかどうか、扶養者がいるかどうかなどによって変わってきますが、以下のような条件を大まかな目安にしてください。
給与所得がある人: 定年退職後、継続雇用されていたり再就職をして会社から給与を受けながら個人年金保険をもらっているという場合、給与所得や退職所得以外の所得の合計が20万円を超えたら確定申告が必要です。給与以外の所得が個人年金保険の年金だけであれば、一般的には雑所得や一時所得が20万円を超えるケースは多くありませんが、予定利率が高かった時代の契約や高額な年金契約の場合などは、20万円を超えてくる可能性があります。
公的年金の受け取りがある人: 公的年金が400万円を超えている場合、源泉徴収されていない公的年金を受け取っている場合、公的年金以外に20万円超の所得がある場合(ここに個人年金保険の雑所得や一時所得も含まれます)は確定申告が必要です。
その他: 個人年金保険による所得や他の所得も含めた所得額から、基礎控除など各種所得控除を差し引いて残額がある場合は、確定申告が必要です。
なお、確定申告が不要となるケースであっても住民税の申告が必要なことがあります。詳しくはお住まいの役所にお問い合わせください。
個人年金保険に関するその他の税金
個人年金保険は、年金を受け取るときの税金以外にも、途中解約時の税金や保険料支払時の保険料控除など、税金にかかわる事項があります。
途中で解約したときにかかる税金
個人年金保険を途中で解約すると解約返戻金が戻ってきますが、この解約返戻金にも税金がかかる場合があります。保険料を支払っている人と解約返戻金を受け取る人が同一人物のときで、解約返戻金がそれまでに支払った保険料の総額より大きい場合、増えた部分(金額)に所得税がかかります。ただし、老後に向けて保険料を支払っていく通常の個人年金保険の場合、途中解約で利益が出るケースはほとんどありません。
一方、保険料を支払っている人と解約返戻金を受け取る人が別人のときは、受け取った解約返戻金全額が贈与税の対象となります。解約時の税金やリスクについては、個人年金保険の解約リスクと年金を残すための3つの方法もあわせてご参照ください。
保険料支払い時の生命保険料控除
個人年金保険に加入して保険料を支払っている人は、生命保険料控除を受けることで毎年の所得税を安くすることができます。生命保険料控除には、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3つの区分があり、一定の条件を満たした個人年金保険の保険料は、個人年金保険料控除という区分で、一般の生命保険や医療保険とは別枠の所得控除があります。
控除額は、所得税で最高40,000円(旧制度なら50,000円)まで、住民税で最高28,000円(旧制度なら35,000円)までとなっています(2026年9月時点の制度に基づく)。個人年金保険料控除の対象となるのは、主に以下の条件を満たす契約です。
- 年金の受取人が保険料支払人(契約者)かその配偶者であること
- 年金の受取人が被保険者であること
- 保険料の払込期間が10年以上であること
- 年金の支払開始が60歳以上で、支払期間が10年以上あること
上記条件にあてはまらない個人年金保険の保険料は、一般生命保険料控除の対象となります。
まとめ:通常は契約者本人が年金で受け取るのがお得
個人年金保険の年金にかかる税金をできるだけ少なくして、かつ受取額も大きくしたい場合は、保険料負担者と年金受取人が同一人物であることが重要な条件です。
そして、年金の受け取り方も、将来の経済情勢が変わって一括で受け取って自分で運用したほうが資産を大幅に増やせるという場合を除いて、通常は年金として毎年受け取ったほうが最終的に受け取れる金額は多くなる傾向にあります。
最も気をつけなければならないのは、せっかく積み立てていった年金が贈与税の対象となってしまうことです。そうならないよう、契約内容や実際の保険料負担者の状況を早めに見直すことをおすすめします。最後に、個人年金保険の受け取りで失敗をしないための2つのポイントを、もう一度おさらいしましょう。
- 保険料負担(支払)者と年金受取人は同一にする
- 年金開始時に一括受け取りをせず、毎年、年金を受け取る
※本記事は編集部が作成した一般的な参考情報です。特定の商品・保険会社を推奨するものではなく、断定的な提案でもありません。実際の要否は、各代理店の窓口で保険募集人にご確認ください。統計・制度に関する数値は今後変更される可能性があるため、最新の情報をあわせてご確認ください。
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