就職したときに考えたい保険
初めての給与で保険を検討する時期に、どこまで備えればよいか。独身・収入が限られる中での考え方と、保険料の負担を抑えながら将来に備えるポイントを解説します。
就職は、初めて自分の給与から保険料を支払うようになるタイミングです。学生時代は親の扶養に入っていた保険も、社会人になると自分自身で必要性を考える機会が増えます。ここでは、就職したばかりの時期に一般的に重要度が高まりやすいリスクと保険の種類、検討のポイントを整理します。
就職したときに想定される4つのリスク
就職した時点で一般的に想定されるリスクには、主に以下の4つがあります。影響度の大小は、あくまで一般的な傾向です。
| リスク | 具体的な内容 | 影響度 |
|---|---|---|
| ①死亡のリスク | 自己の葬祭費用 | 小 |
| ②病気・ケガのリスク | 入院・がん・生活習慣病の治療費 | 大 |
| ③働けなくなったときのリスク | 治療期間中の生活費・治療費 | 大 |
| ④介護のリスク | 要介護状態になったときの介護費用 | ― |
独身で養う家族がいない時期は、死亡保険よりも自分自身の医療費・生活費に備える保険を優先したほうがよいという考え方が一般的です。実家のお墓に入れる場合は、墓代の準備までは不要とされることが多く、死亡保障の優先度はライフステージの中でも低めです。
①死亡のリスクへの備え方
独身で養う家族がいない場合、死亡した際に必要となるお金は、主に葬祭費用です。生活費や住居費用を残す相手がいないため、高額な死亡保障を用意する必要性は高くありません。
死亡した場合に備える代表的な生命保険には、以下の3種類があります。
| 保険の種類 | 保険期間 | 保険料の手ごろさ | 解約返戻金 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 定期保険 | 「10年間」「65歳まで」など一定期間 | 〇 | なし | 解約返戻金がない分、終身保険より安価に保障を用意できる |
| 終身保険 | 一生涯 | △ | あり | 終身払い・短期払いなど支払方法により保険料が変わる |
| 収入保障保険 | 「10年間」「65歳まで」など一定期間 | ◎ | なし | 保険金を年金形式で毎月受け取れる、定期保険の一種 |
※保険会社・保険商品によって異なる場合があります。
高額の死亡保障を前提とする定期保険や収入保障保険は、家計を支える家族がいない独身の時期には検討の優先度が高くありません。同居の親を養っている場合など、特別な事情がない限りは、葬祭費用程度を準備できる終身保険を少額から検討する程度で十分とされることが多いです。
万一の対策チャート
②病気・ケガのリスクへの備え方
厚生労働省の令和6(2024)年簡易生命表によると、男性の平均寿命は81.09年、女性は87.13年です(出典:厚生労働省)。平均寿命は長い一方で、若いうちに大きな病気やケガに見舞われるリスクがゼロになるわけではありません。
| 保険の種類 | 保障期間 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 終身医療保険 | 一生涯 | 保険料が加入時から変わらない。女性疾病特約・通院保障特約・先進医療特約など特約が豊富 |
| 定期医療保険 | 「10年」「65歳まで」など期間または年齢で設定 | 保障内容は終身医療保険とほぼ同じ。更新時に保険料が年齢に応じて上がる |
| がん保険 | 定期・終身のいずれか | がんと診断された際にまとまった診断給付金を受け取れるタイプが中心。保険会社によりがんの定義や保障範囲が異なる |
| 生活習慣病保険 | 定期・終身のいずれか | がん・心疾患・脳血管疾患等を保障。心疾患・脳血管疾患は労働制限や入院が保障の条件になることが多い |
会社員の場合、有給休暇や高額療養費制度があるため、必ずしも高額な保障が必要とは限りません。休業期間中の収入減を補う目安として、会社員は日額5,000円〜10,000円程度、自営業者は休業がそのまま収入減に直結しやすいため、日額10,000円〜15,000円程度がよく参照されます。
医療保険・がん保険は健康なうちにしか加入できない商品が多く、保険料が年齢とともに上がる仕組みの商品が多いため、若いうちに検討したほうが月々の負担を抑えやすいという特徴があります。就職を機に検討を始める意味は、この点にもあります。
入院給付金の一般的な目安
入院給付金は、高額療養費制度で賄いきれない休業期間中の収入減を補う目的で検討されることが一般的です。がんについては、退院後の通院や寛解までの検査費用、治療による労働制限を考慮し、まとまった一時金を受け取れるタイプが選択肢として挙げられます。心疾患・脳血管疾患などの生活習慣病も、長期のリハビリを見据えて一時金タイプが検討されやすい傾向にあります。
病気・ケガの対策チャート
③働けなくなったときのリスクへの備え方
ケガや病気の後、命に別条がなくてもすぐに働くことが難しい状態になることがあります。この場合、収入が下がる恐れに加え、通院・リハビリの費用もかかります。
会社員には傷病手当金の制度がありますが、支給には以下のような条件があります(出典:全国健康保険協会、制度内容は今後変更される可能性があるため最新情報の確認をおすすめします)。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと(土日・祝日・公休日を含む)
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
- 支給される期間は支給開始から最長1年6ヵ月
働けないときの対策チャート
1日あたりの支給額は「支給開始日以前12ヵ月間の標準報酬月額の平均÷30日×3分の2」で計算され、給与と同額が得られるわけではありません。また、国民健康保険の加入者には傷病手当金は支給されません。
障害年金も選択肢の一つですが、障害の程度に応じて支給額が決まります。令和8年度時点の障害基礎年金は、1級が年額1,059,125円、2級が年額847,300円です(出典:日本年金機構の公表資料、年度により改定されるため最新の金額を確認してください)。
実家暮らしなど生活基盤に余裕がある場合でも、長期の療養を強いられれば自分の生活に影響が出ます。公的な保障だけでは足りない部分を、就業不能保険で補うという考え方があります。就業不能保険は、保険会社が定める就業不能状態と認定された場合に、就業可能になるまで、または保険期間が終わるまで一定額を受け取れる保険です。定年までの期間が長い分、若いうちに備えておく意味は大きいとされています。
④介護のリスクへの備え方
要介護状態になった場合、まず給付のベースになるのは公的介護保険です。ただし、公的介護保険の給付を受けられるのは原則65歳以上で、65歳未満の場合は対象となる疾病が限られています。
この隙間を補う目的で検討されるのが、生命保険会社の「介護保険」です(損害保険会社では取り扱いがありません)。
保険会社によっては加入年齢を40歳以上としているケースも多く、就職したばかりの時期に介護保険への加入を積極的に検討する優先度は、他のリスクと比べて高くないという考え方が一般的です。要介護状態への備えよりも、②・③で挙げた病気・ケガや就業不能へのリスクを先に検討したほうがよいと考えられます。
介護の対策チャート
住宅資金の準備
就職したばかりの時期に、将来の住宅購入を目標にした積み立てを始めるのは難しいと感じる方も多いでしょう。保険で住宅資金を準備する方法としては、主に次の3つが挙げられます。
| 保険の種類 | 特徴 | 住宅資金としての向き不向き |
|---|---|---|
| 終身保険(短期払) | 短期払いにすることで解約返戻金を高くできる。低解約返戻金型なら保険料を抑えつつ継続しやすい | 払込総額を解約返戻金が上回るまで15〜20年程度かかるため、頭金には不向き。繰り上げ返済資金としての活用が検討されやすい |
| 外貨建て保険 | 外貨で運用するため円建てより金利が高い傾向。為替相場の影響を受ける | 短期間での元本超過は難しく、頭金より繰り上げ返済資金として検討されやすい |
| 変額保険 | 株式・債券等で運用し、運用実績により解約返戻金が変動する | 短期間では運用結果が出づらく、頭金より繰り上げ返済資金として検討されやすい |
住宅を取得する年齢は調査によって幅がありますが、就職時から準備を始めれば、頭金というより「15〜20年後に自由に使える資金」として比較的長い準備期間を確保できます。ただし、就職したばかりの段階で住宅購入を具体的にイメージするのは難しく、目的を絞った貯蓄よりも、まずは長期の積み立てとして捉えておき、住宅ローンを組んだ後の繰り上げ返済資金として活用を検討する考え方が現実的です。なお、一般的に加入年齢が若いほど返戻率が高くなる傾向があるため、検討するのであれば早いうちのほうが有利とされています。
老後資金の準備
老後の資金計画は、就職して間もない時期から考え始めることで、運用期間を長く確保しやすくなります。
| 保険の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 個人年金保険 | 契約時に定めた年齢から年金を受け取れる。保証期間付終身年金・確定年金・有期年金の3種類がある。生命保険料控除とは別枠の「個人年金保険料控除」の対象 |
| 養老保険 | 保険期間中の死亡時と満期時に同額の保険金を受け取れる。保険期間終了と同時に保障がなくなるため、満期のタイミングに注意が必要 |
| 外貨建て保険 | 円建てより金利が高い傾向。死亡保障も兼ねられるが、為替変動により受取額が変動するリスクがある |
| 変額保険 | 運用実績により保険金額が変動。死亡保険金には最低保証があるが、解約返戻金・満期保険金には最低保証がない |
個人年金保険は長期間の積立てが前提のため、就職して間もない時期に始めるほど、毎年の生命保険料控除・個人年金保険料控除のメリットを長く受けられます。外貨建て保険や変額保険も、運用期間を長く確保しやすい点は同様ですが、値動きのリスクがあるため、これらだけに老後資金の準備を頼るのではなく、選択肢の一つとして捉えることが大切です。
なお、勤務先に確定拠出年金(企業型DC)や持株会制度がある場合は、保険だけにこだわらず、あわせて検討する価値があります。企業型DCは、企業が毎月積み立てた掛け金を従業員自身が運用し、運用成績によって退職後の受取額が変わる制度です。原則60歳まで受け取れませんが、税制上の優遇を受けながら長期の資産形成ができる点は、保険の老後資金準備と共通する性質を持っています。
保険選びで気をつけたいこと
就職して毎月給与が入ってくると、勧められるままに保険へ加入してしまい、必要以上の保障を抱えてしまうケースもあります。保険を検討する際は、以下の点を意識しておくとよいでしょう。
- 貯蓄性を優先する: 生命保険に加入する場合は、まず貯蓄型の保険を検討し、次に医療保険など自分自身を守る保険を検討する考え方がある
- 保険だけにこだわらない: 企業型確定拠出年金や持株会制度など、勤務先の制度も選択肢に含めて比較検討する
- 長い準備期間を活かす: 就職したての時期は、定年までの期間が最も長く確保できるタイミングでもある
まとめ
就職は、独身で家族を養う必要がない分、死亡保障よりも自分自身の医療費・生活費への備えを優先しやすい時期です。住宅資金・老後資金についても、目的を絞った貯蓄が難しく感じられる時期ではありますが、長期の準備期間を活かせる点は大きな強みです。まずは無理のない範囲で、貯蓄型の保険や勤務先の制度も含めて少しずつ検討していくとよいでしょう。
※本記事は編集部が作成した一般的な参考情報です。特定の商品・保険会社を推奨するものではなく、断定的な提案でもありません。実際の要否は、各代理店の窓口で保険募集人にご確認ください。統計・制度に関する数値は今後変更される可能性があるため、最新の情報をあわせてご確認ください。
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