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定年退職したときに考えたい保険

公開日:2026-09-19更新日:2026-09-19

定年退職を機に、死亡保障より治療費・介護費用への備え、そして相続の準備に重きが移る時期です。生命保険の非課税枠を活用した考え方も含めて解説します。

定年退職は、これまでの「働いて備える」時期から「これまでの備えをどう活かすか」を考える時期への転換点です。死亡保障の必要性はさらに小さくなる一方、病気・ケガや介護への備え、そして次の世代への資産の引き継ぎ方が、あらためて重要なテーマになります。ここでは、定年退職というタイミングで一般的に重要度が高まりやすいリスクと保険の考え方を整理します。

定年退職したときに想定される4つのリスク

定年退職した時点で一般的に想定されるリスクには、主に以下の4つがあります。影響度の大小は、あくまで一般的な傾向です。

リスク具体的な内容世帯主への影響度配偶者への影響度
①死亡のリスク自己の葬祭費用、相続のための準備
②病気・ケガのリスク入院時の治療費、がん・生活習慣病の治療費
③働けなくなったときのリスク治療期間中の生活費・治療費
④介護のリスク要介護状態になったときの介護費用

定年退職後は、死亡保障よりも治療費・医療費・介護状態への備えに重きを置きながら、生命保険を使った相続の準備を進めていく時期とされています。子の独立で下がった死亡保障の優先度はここでも大きくは変わりませんが、代わりに「資産をどう次の世代へ引き継ぐか」という新しいテーマが加わります。

①死亡のリスクへの備え方

定年退職後、世帯主や配偶者が亡くなった場合に必要となるお金は、主に葬祭費用です。生活費については、厚生年金に加入していた場合、配偶者に遺族厚生年金として報酬比例部分の4分の3が引き継がれる仕組みがあり、現役時代に比べて心配は小さくなります。

一方で新たに検討したいのが、生命保険を使った相続への備えです。生命保険には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、現金資産の一部を保険に置き換えることで、相続税の課税対象額を抑えられる場合があります。また、生命保険金は受取人を指定できるため、渡したい相手に確実に資産を残せる点も特徴です。

相続税の基礎知識(2026年9月時点の税制に基づく)

  • 相続税の基礎控除額:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
  • 生命保険の非課税枠:500万円×法定相続人の数

基礎控除を超えた部分には、法定相続分に応じた取得金額をもとに、以下の速算表で税率が適用されます。

各法定相続人の取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
1,000万円超〜3,000万円以下15%50万円
3,000万円超〜5,000万円以下20%200万円
5,000万円超〜1億円以下30%700万円
1億円超〜2億円以下40%1,700万円
2億円超〜3億円以下45%2,700万円
3億円超〜6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

計算例:資産1億円(現金7,000万円、生命保険3,000万円)を、配偶者と子2人(長男・次男)が法定相続分どおりに相続する場合

  1. 生命保険の非課税枠(500万円×3人=1,500万円)を差し引くと、課税対象額は現金7,000万円+生命保険1,500万円=8,500万円
  2. 基礎控除額(3,000万円+600万円×3人=4,800万円)を差し引くと、課税遺産総額は3,700万円
  3. 法定相続分で按分すると、配偶者1,850万円(2分の1)、長男・次男はそれぞれ925万円(4分の1)
  4. 速算表に当てはめると、配偶者は1,850万円×15%-50万円=227.5万円、長男・次男はそれぞれ925万円×10%=92.5万円の相続税額となります

※生前贈与や配偶者の税額軽減など、その他の特例は考慮していない一例です。税制は今後変更される可能性があるため、実際の相続対策は税理士や保険募集人など専門家にご確認ください。

死亡した場合に備える代表的な生命保険には、以下の3種類がありますが、定年退職後は目的そのものが変わる点に注意が必要です。

保険の種類保険期間保険料の手ごろさ解約返戻金特徴
定期保険「10年間」「65歳まで」など一定期間なし保険期間が定まっているため、葬祭費用や相続の準備には向きにくい。既に加入している場合は見直しのタイミングともいえる
終身保険一生涯あり解約返戻金があり、相続の非課税枠を活用した資産の置き換えにも向く
収入保障保険「10年間」「65歳まで」など一定期間なし家族の生活費を賄う目的の保険のため、子が独立した後は必要性が下がる

※保険会社・保険商品によって異なる場合があります。

世帯主・配偶者それぞれの検討の目安

保険の種類世帯主配偶者
定期保険保険期間が決まっているため葬祭費用の準備には向きにくい。加入中の場合は見直しを検討したい家計への影響は大きくないと考えられるため、積極的な検討の優先度は高くない
終身保険葬祭費用に加え、相続の非課税枠を活用した資産の置き換え先として検討材料になる葬祭費用の準備がまだの場合は検討したい
収入保障保険子の独立後は家族の生活費を賄う目的の必要性が下がるため、既契約は見直しの対象になりやすい家計への影響は大きくないと考えられるため、積極的な検討の優先度は高くない

不要になった定期保険・収入保障保険があれば解約や減額を検討し、その分を相続対策としての終身保険に振り向けるという考え方もあります。ただし、健康状態によっては新たな終身保険への加入が難しい場合もあるため、検討は早めに行っておくとよいでしょう。

定期終身がん医療介護学資個人年金変額外貨収入保障就業不能火災
定期
Lv1
終身
Lv2
収入保障
Lv1

万一の対策チャート

②病気・ケガのリスクへの備え方

厚生労働省の令和6(2024)年簡易生命表によると、男性の平均寿命は81.09年、女性は87.13年です(出典:厚生労働省)。また、令和5(2023)年患者調査によると、入院受療率(人口10万人あたりの入院患者数)は全国平均945人であるのに対し、65歳以上では2,449人、75歳以上では3,351人となっており(出典:厚生労働省)、年齢が高くなるほど入院する確率は高くなる傾向にあります。医療保険の準備がまだの場合は、この時期の加入をおすすめします。

保険の種類保障期間主な特徴
終身医療保険一生涯保険料が加入時から変わらない。女性疾病特約・通院保障特約・先進医療特約など特約が豊富
定期医療保険「10年」「65歳まで」など期間または年齢で設定保障内容は終身医療保険とほぼ同じ。更新時に保険料が年齢に応じて上がる
女性保険定期・終身のいずれか医療保険に女性疾病特約をセットにしたタイプ
がん保険定期・終身のいずれかがんと診断された際にまとまった診断給付金を受け取れるタイプが中心。保険会社によりがんの定義や保障範囲が異なる
生活習慣病保険定期・終身のいずれかがん・心疾患・脳血管疾患等を保障。心疾患・脳血管疾患は労働制限や入院が保障の条件になることが多い

厚生労働省の令和6(2024)年人口動態統計(確定数)によると、日本人の死因は1位ががん(悪性新生物、全死亡者の23.9%)、2位が心疾患(14.1%)で、脳血管疾患(6.7%程度)とあわせた3大疾病で死因の4割超を占めています(出典:厚生労働省)。経済的な不安を抱えずに納得のいく治療を受けるためにも、がん保険での備えを検討したい時期です。心疾患・脳血管疾患といった生活習慣病も、生活習慣病保険であわせて備えておくと安心です。

入院給付金の一般的な目安

年齢が高くなるほど入院日数は長期化する傾向があるとされています。心疾患・脳血管疾患は、発症後の治療やリハビリが長期に及ぶこともあるため、まとまった一時金を受け取れるタイプの保険が選択肢として挙げられます。

定期終身がん医療介護学資個人年金変額外貨収入保障就業不能火災
がん
Lv2
医療
Lv2

病気・ケガの対策チャート

③働けなくなったときのリスクへの備え方

ケガや病気の後、命に別条がなくてもすぐに働くことが難しい状態になることがあります。この場合、収入が下がる恐れに加え、通院・リハビリの費用もかかります。

現役で働いている場合は、会社員には傷病手当金の制度がありますが、支給には以下のような条件があります(出典:全国健康保険協会、制度内容は今後変更される可能性があるため最新情報の確認をおすすめします)。

  • 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
  • 仕事に就くことができないこと
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと(土日・祝日・公休日を含む)
  • 休業した期間について給与の支払いがないこと
  • 支給される期間は支給開始から最長1年6ヵ月
定期終身がん医療介護学資個人年金変額外貨収入保障就業不能火災
就業不能
Lv1

働けないときの対策チャート

1日あたりの支給額は「支給開始日以前12ヵ月間の標準報酬月額の平均÷30日×3分の2」で計算され、給与と同額が得られるわけではありません。また、国民健康保険の加入者には傷病手当金は支給されません。

障害年金も選択肢の一つですが、障害の程度に応じて支給額が決まります。令和8年度時点の障害基礎年金は、1級が年額1,059,125円、2級が年額847,300円です(出典:日本年金機構の公表資料、年度により改定されるため最新の金額を確認してください)。

定年退職後は、公的年金が主な収入源となるため、現役時代のような「働けなくなったことによる収入減」という考え方自体が当てはまりにくくなります。そのため、就業不能保険を新たに検討する優先度は高くないという考え方が一般的です。就労を続ける場合は、勤務先の制度とあわせて必要性を確認するとよいでしょう。

④介護のリスクへの備え方

要介護状態になった場合、まず給付のベースになるのは公的介護保険です。65歳以上の方は「第1号被保険者」として、原因を問わず要介護認定を受ければ給付を受けられます。40〜64歳の「第2号被保険者」は16種類の特定疾病に限られていましたが、定年退職の年齢になると、この制約がなくなる方が多くなります。

この公的介護保険を補う目的で検討されるのが、生命保険会社の「介護保険」です(損害保険会社では取り扱いがありません)。給付条件には、公的介護保険の要介護認定に準じる「公的介護保険制度連動型」と、保険会社独自の基準を設けているタイプがあり、加入時にはどちらかを確認しておく必要があります。

定年退職後は収入が年金中心になるため、介護費用の負担が家計に直結しやすく、備えの優先度はこれまでで最も高い時期といえます。介護は本人だけでなく家族の負担も大きく、場合によっては介護をする家族が仕事を続けられなくなることもあるため、②で挙げた病気・ケガへの備えとあわせて優先的に検討したいリスクです。

定期終身がん医療介護学資個人年金変額外貨収入保障就業不能火災
介護
Lv3

介護の対策チャート

住まいを守る備え

住宅ローンを完済した後は、火災保険の契約がいつの間にか切れていた、というケースも少なくありません。住宅ローンを組む際に加入した火災保険が、ローンの完済とともに満期を迎えていないか、この機会に確認しておくとよいでしょう。

保険の種類特徴
火災保険火災・落雷・風災・水災等による建物・家財の損害を補償。加入から年数が経っている場合、「時価」契約のままだと再建に必要な金額が下りないことがあるため、「新価(再調達価額)」になっているか確認したい
地震保険火災保険とセットでのみ加入できる。地震・噴火・津波による損害は火災保険単体では補償されないため、未加入の場合は検討したい

資産の取り崩し方を考える

個人年金保険や養老保険など、これまで準備してきた老後資金は、定年退職を機に受け取り方を具体的に確認する時期に入ります。新たに長期の積立商品を始めるタイミングではなく、既にある資産をどう活用するかを整理する段階です。個人年金保険であれば受取開始年齢と受取方法(確定年金・終身年金など)を、養老保険であれば満期のタイミングとその後の保障の有無を、それぞれ確認しておくとよいでしょう。外貨建て保険・変額保険についても、解約返戻金の状況を確認し、取り崩しのタイミングを検討する材料にできます。

相続・終活に向けて確認したいこと

定年退職を機に、以下の点を確認しておくとよいでしょう。

  • 保険金受取人を確認する: 結婚・出産時に指定した受取人が、現在の意向と合っているか見直す
  • 生命保険の非課税枠を活用できているか確認する: 現金資産の一部を、相続の非課税枠がある終身保険に置き換えられないか検討する
  • 火災保険・地震保険の契約状況を確認する: 住宅ローン完済後に契約が切れていないか、保障内容が「新価」になっているか確認する

まとめ

定年退職は、死亡保障よりも病気・ケガ・介護への備え、そして相続の準備に重きが移る時期です。平均余命を踏まえれば、退職後もまだ長い期間があります。年齢が若く元気なうちに不要な保障を整理し、自身の医療費・介護費用は自身の世代で備えながら、次の世代へ資産を滞りなく引き継げるよう準備を進めていくとよいでしょう。

※本記事は編集部が作成した一般的な参考情報です。特定の商品・保険会社を推奨するものではなく、断定的な提案でもありません。実際の要否は、各代理店の窓口で保険募集人にご確認ください。統計・税制に関する数値は今後変更される可能性があるため、最新の情報をあわせてご確認ください。

執筆

ほけんスコア編集部

Googleの公開データをもとに保険の窓口を客観的に比較・解説する、ほけんスコアの編集チームです。

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