歩きスマホの事故で保険は使えるか?
歩きスマホによる事故で自分がケガをした場合や、他人にケガをさせてしまった場合に、傷害保険・個人賠償責任保険・生命保険・医療保険が使えるのかを一般的な約款の内容から解説します。
歩きスマホが原因の事故のニュースを見かけることがあり、街中でも歩きスマホをしている人は少なくありません。事故にならなくても、人にぶつかりそうになったり通行の邪魔になったりすることが多いため、歩きスマホはやめましょうというのが大前提です。
とはいえ、何かの拍子に歩きスマホをしてしまい事故を起こしてしまったら、自分が加害者になり、賠償金やケガの治療費など大きなお金が必要になることもあります。そんなとき、加入している保険は使えるのでしょうか。この記事では、一般的な保険の約款の内容をもとに整理していきます。あくまで参考情報であり、歩きスマホをしないことが前提であることは変わりません。
1. 歩きスマホによる事故と保険
歩きスマホで事故にあった場合、自分がケガをしたときに備える保険と、他人に損害を与えたときに備える保険が、それぞれ役立つ可能性があります。
| 状況 | 関係する保険の種類 |
|---|---|
| 自分がケガをしたときに備える | 傷害保険、医療保険 |
| 自分が死亡したときに備える | 生命保険、傷害保険 |
| 他人に損害を与えたときに備える | 個人賠償責任保険 |
なお、保険の約款は保険会社ごとに異なります。以下で紹介する内容がすべての保険会社に当てはまるとは限らない点にご注意ください。
2. 傷害保険
傷害保険は、一般的に事故でケガをして通院した場合に通院保険金、入院した場合に入院保険金、死亡した場合に死亡保険金を受け取れる保険です。歩きスマホによる事故にも役立ちそうですが、歩きスマホは本人の不注意でもあるため、保険金が支払われるかどうかは約款の内容を確認する必要があります。
多くの傷害保険の約款には、保険金を支払わない事由として「保険契約者または被保険者の故意または重大な過失」「保険金を受け取るべき者の故意または重大な過失」「被保険者の自殺行為、犯罪行為または闘争行為」などが挙げられています(一部抜粋)。
「重大な過失」にあたるか?
故意や自殺行為は該当しないとして、気になるのは歩きスマホが「重大な過失」となるかどうかです。歩きスマホが該当するかどうかは約款に明記されておらず、事故が起きたときの状況から保険会社が個別に判断することになります。たとえば、歩道でつまずいて転んだ場合と、赤信号に気づかず車道に出て事故にあった場合とでは、過失の大きさは異なると考えられます。
犯罪行為や闘争行為にあたるか?
歩きスマホで交通ルールを守らずに事故にあった場合は、道路交通法に反したとして犯罪行為とみなされる可能性があります。また、歩きスマホで他人とぶつかったことがきっかけでケンカになりケガをした場合は、闘争行為に該当する可能性があります。歩きスマホや操作に気を取られた行き過ぎた行動がきっかけで事故になった場合、状況によっては犯罪行為・闘争行為に該当してしまうことがある点には注意が必要です。
3. 個人賠償責任保険
個人賠償責任保険は、日常生活で誤って他人にケガをさせたり他人の物を壊したりして、損害賠償金や弁護士費用などを負担した場合の損害に備える保険です。歩きスマホによる事故で他人にケガをさせたり物を壊してしまったりすることは十分に起こりえるため、重要な保険といえます。
約款上、保険金を支払わない損害としては「契約者または被保険者の故意によって生じた損害賠償責任」「他人から借りたり預かったりした物に対する損害賠償責任」などが一般的です(一部抜粋)。約款から判断すると、歩きスマホであっても故意でなければ補償の対象になりそうです。
歩行者同士の事故で賠償責任が発生した事例としては、駅構内でキャリーバッグに高齢者がつまずいて転倒し骨折した事故で、約100万円の賠償命令が出た判例があります。また、お店を探しながら歩いていた女性が交差点で立ち止まったところ高齢者と接触し、転倒した高齢者が骨折した事故では、一審(東京地裁)で女性に約780万円の損害賠償を命じる判決が出ました。歩行者には他の歩行者と衝突しないように注意する義務がある、というのがその理由です。ただし、この事故は控訴審で逆転判決となり、最終的には賠償の必要なしという結論になっています。判決は個別の状況によって大きく変わるため、あくまで一つの参考事例として捉えてください。
4. 生命保険
生命保険は死亡したときに保険金が支払われる保険です。歩きスマホの事故で死亡してしまった場合、死亡保険金は受け取れるのでしょうか。一般的な生命保険の約款では、死亡保険金を支払わない事由として「責任開始期の属する日からその日を含めて3年以内の自殺」「保険契約者または死亡保険金受取人の故意による致死」などが記載されています(一部抜粋)。これを見る限り、歩きスマホの事故による死亡でも、故意でなければ死亡保険金は支払われそうです。
また生命保険には、事故等による死亡の場合に受け取れる災害死亡保険金や災害割増特約などがあります。こちらは通常の死亡保険金と異なり、「契約者または被保険者の故意または重大な過失」「受取人の故意または重大な過失」「被保険者の犯罪行為」などがあると支払われません。重大な過失の判断は、保険会社によって具体例が示されていることもあります。一例として、高速道路を逆走して対向車と衝突した場合や、泥酔して道路上で寝込んでいて車にはねられた場合は「支払わないケース」、居眠り運転で路肩に衝突した場合や、酒に酔っていても横断歩道を歩行していて走行してきた車にはねられた場合は「支払うケース」として紹介されている例があります。この基準に照らすと、歩道での歩きスマホは重大な過失にはあたりにくいと考えられますが、最終的な判断は個別の状況によります。
5. 医療保険
医療保険は病気やケガで入院や手術をしたときに給付金を受け取れる保険です。歩きスマホの事故によるケガで入院や手術をした場合も、給付金が支払われない事由として一般的に挙げられるのは「保険契約者の故意または重大な過失」「被保険者の故意または重大な過失」「被保険者の犯罪行為」です(一部抜粋)。故意や犯罪行為にあたらなければ、入院給付金・手術給付金を受け取れる可能性があります。
6. 歩きスマホでも、故意や重大な過失がなければ補償の対象になりうる
ここまで見てきたように、歩きスマホに関係した保険金の支払いは、故意や犯罪行為、重大な過失がなければ補償される可能性が高いと考えられます。重大な過失にあたるかどうかは事故の状況によって保険会社が判断するため断定はできませんが、周囲の状況を無視した歩きスマホは保険の観点からもリスクが大きい行為です。
歩きスマホによる事故の保険金支払いの考え方(イメージ) ※実際の可否は事故の状況・約款により個別に判断されます
まとめ
歩きスマホをするから保険に入る、という考え方は本末転倒です。保険の有無に関わらず事故には注意が必要ですし、個人賠償責任保険などは歩きスマホをしていなくても検討しておきたい保険です。ご自身の加入状況を確認し、必要な補償が不足していないか、この機会に見直してみてはいかがでしょうか。なお、保険会社や商品により約款の内容には違いがあるため、詳細は加入中または加入予定の保険会社にご確認ください。
※本記事は編集部が作成した一般的な参考情報です。特定の商品・保険会社を推奨するものではなく、断定的な提案でもありません。実際の要否は、各代理店の窓口で保険募集人にご確認ください。統計・制度に関する数値は今後変更される可能性があるため、最新の情報をあわせてご確認ください。
ほけんスコア編集部
Googleの公開データをもとに保険の窓口を客観的に比較・解説する、ほけんスコアの編集チームです。
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